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大阪人の反骨精神と「維新の会」(その1)

 このブログでは「維新の会」に関わるテーマを何度も取り上げてきた。私は大阪に生まれ、暮らし、働いている人間だから、「維新人気」という現象には注目せざるを得ないし、右傾化が叫ばれる昨今、「維新人気」がどういう意味を持つのか冷静に分析することは、これからの日本社会・政治を考える上でも重要になると考えているからだ。

 一時は日本中を維新人気が席巻し、2012年衆院選では比例第2党、組織が全くなく関西メディアの影響力の無い東北・関東地方でも維新が民主や公明・共産といった組織政党を上回る得票をするという異常な状態であった。国会での議席数ゼロ、大阪での「自治体改革」くらいしか成果の無い維新の会がこれほどまでに得票するというのは、「自民・民主」両党を忌避する有権者が消去法的に選択した要素が強いとはいえ、維新の掲げるスローガンが何かしら国民の感情・感覚に訴えかけるものがあったからだろう。

 そんな維新の会も国会での「責任野党」路線による存在感の無さ、橋下が「慰安婦発言」によって国際社会のひんしゅくを買い「まともな政治家」だとみなされなくなったことで人気を失って参院選では伸び悩み、その後はさらに低迷している。2012年の衆院選前は異常なほど繰り返された「橋下・維新翼賛報道」も今ではすっかり姿を消した。とはいえ、大阪での人気はまだまだ根強い。その理由には「大阪的な反骨精神」が維新支持のベースにあるからでは無いだろうかと思う。

 大阪(というか関西地方)のマスコミというのは独特である。地方局でありながらも東京のキー局に次ぐ視聴人口を持つ「準キー局」であるのが関西のテレビ局だ。吉本・松竹などの大手芸能事務所の拠点があるためタレントの確保には困らず、関西ローカル局の番組制作本数は多くクオリティも高い。他の地方なら情報番組なら作れても、東京のバラエティ番組に見劣りしないような番組を作るのは予算・人員的な面で難しいだろう。それに比べれば、関西ローカル局は健闘していると言えるだろう。
 この関西メディアにはひとつの特徴が有る。「反東京」という気分だ。アナウンサーには「東京のキー局の試験に落ちた」というコンプレックスがあるし、放送作家・タレントには「東京よりも予算が少ないなかでも東京よりも面白い番組をつくってやる」という気分がある。視聴者も「東京もん」のよりも大阪のほうが上だ、と思いたい心理が有る。そういう視聴者・テレビ局が一体になった「反東京」の気風を代表するのが故・やしきたかじん上沼恵美子といった関西ローカルの大物タレントである。
 たかじんは「東京・全国ネットのマスコミ」の欺瞞・建前を批判し、関西ローカルメディアだからこそ「真実・本音」が語れるのだと豪語していた。上沼恵美子は政治とは関係ないが、「えみちゃんねる」や(今は番組名は変わっているが)「えみいSHOW」といった芸能番組で、全国区のタレントをゲストに呼んでは「全国ネットでは話せない裏事情の暴露・本音を引き出す」ことで人気を得てきた。
 よく考えたら変な話ではある。たかじんが批判する「全国ネット」を放送しているのも同じテレビ局である。同じテレビ局の放送で「全国ネット」「関西ローカル」両方を流しているのだ。夕方だと3時から6時くらいまでは関西ローカルの情報番組、6時からは東京発の全国ニュース、そして6時半からは関西ローカルのニュース、といった具合である。だから、たかじんの「東京マスコミ」批判とはどこまでいってもプロレス的な「演出」「芸風」でしかない。関西のテレビ局は東京のテレビ局からの番組供給が無いと経営が成り立たないのだから、「東京批判」は「ネタ」の域を超えることはない。たかじんが吉本や松竹の芸人が幅を利かせる関西芸能界で(個人事務所・本業は歌手というハンデを背負って)生き残るために考え抜いて努力した末に行き着いた「芸風」なのだろう。たかじん本人にはその自覚があったように思う。
 この「反東京」関西メディアが橋下・維新人気のベースにあり、「ネトウヨ現象」にも通じるものがあると私は考える。長くなってきたので、続きは次の記事にします。