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令和の政治分析2~「新保守層」が新自由主義&国家主義を後押しする~

 「旧保守」「新保守」「革新」の3つを軸にした政治分析について、8年前に記事を書いたが、4年前にも改めて「新保守層」にターゲットを絞った記事を書いた。そこでは、中野晃一「右傾化する日本政治」(岩波新書)で用いられた「旧右派」から「新右派」への転換、新自由主義国家主義がともに進んでいくのが「新右派」であると論じた。また、内田樹ブログに触発される形で書いた「グローバリズムvsナショナリズム?」(2013年当ブログ記事)ではグローバリズムナショナリズムが対立するのではなく、グローバル競争を勝ち抜くために国民のナショナリズムの感情に訴えて、グローバル企業や富裕層のために支援しよう、という補完的な関係になっていると論じた。いずれもキーワードは「新自由主義」(=グローバル資本主義、経済の規制緩和)、「国家主義」(=ナショナリズム愛国心の動員)である。

 新自由主義では国民の格差是正・医療福祉は軽視され、その結果として国民の多数が貧困層に転落することになる。新自由主義によって地域経済・コミュニティが解体した社会においては貧困層が頼る場所もなく、彼らは国家への帰属意識愛国心に精神的な癒やしを求めることになる。それが国家主義の亢進・国家へのさらなる権力集中を後押しし、力をさらにつけた国家権力は、さらに新自由主義を推し進めることになる。この新自由主義の権力の源泉にあるのは、その総本山であるアメリカである。安倍政権はアメリカに徹底的に追従することで権力基盤を安定させ、アメリカのための新自由主義政策をすすめる。そして安倍政権に媚びへつらうことで地位を保っているのが大阪維新である。維新もまた安倍政権によるテコ入れによってピンチを脱し、反対勢力を抑え込んできた。この「アメリカ-安倍政権」「安倍政権-大阪維新」の関係は相似形である。

この「新自由主義」&「国家主義」の組み合わせと「新保守層」(都市部ホワイトカラーを中心とした保守層)の相性は非常に良い。なぜなら「新保守層」は業界団体・地域団体などに属して利益の分配に与る利権政治(「旧保守」)とは無縁であるから、「旧保守」への利益分配闘争に明け暮れる自民党派閥政治には否定的であり、「既得権益打破」「自民党をぶっ壊す」といった「旧保守たたき」に拍手喝采を送る。そして、「旧保守」を解体する政策こそが新自由主義である。地方の利権・土建業者よりもグローバル企業の経済活動の規制緩和、それは新保守層が属する民間企業へのテコ入れであり、新保守層のための政策でもあるからである。そして、新保守層は都市部に住んで核家族を形成している。彼らにはなにか中間的な団体に属してはいない。企業に所属しているが、終身雇用幻想が崩れたいま、企業への忠誠心、帰属意識は低い。結果、新保守層は「国家主義」の提供する愛国心・「日本スゴイ!」に精神的な癒やしを求めることになる。自分たちの所属する地域・民族にアイデンティティを求めることは「自然な感情」であるために、この「愛国心」を左派が批判したところで却って反発を招くだけなので厄介である。

「企業」と「国家」に所属し、その安定・発展・権力拡大を望むのが「新保守層」であり、それが多数派であるならば、それでいいではないかという見方もあるだろう。しかし、企業と国家が強大化した先に行き着くのは、低賃金かつ重税を背負う貧困化した市民が大多数を占める社会である。一方で一握りの企業・国家の中枢にいるエリートは巨額報酬とグローバル金融を駆使した脱法的節税で巨万の富を溜め込む。このような社会を目指していいのかが問われているのである。

じゃあどうすればいいの?新自由主義は避けられないんじゃないの?というのはまた次回。