ナナメヨミBlog

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いま、大阪に必要なこと

 堺市長選挙が告示された。「大阪都構想」賛成の維新・西林と反対の現職・竹山市長の一騎打ちだ。橋下が政治の世界に進出して、維新結成(2010年)以来、大阪の政治テーマの中心は「大阪の行政機構」問題、「大阪都構想」の是非になっている。橋下が語る大阪都構想では政治の仕組みを変えれば、行政が効率化して市民のために予算を配分でき、役所主導の成長戦略・経済政策によって大阪経済が復活し、東京に対抗しうる都市になりうるかのような話になっている。大阪都構想に反対する側からは、大阪都構想の「二重行政」解消に対する疑義(都構想を実現したらかえって人件費が増える)、市民サービスがカットされる、無駄な公共事業が再び始まる、といった批判がある。賛成にせよ反対にせよ、いまの大阪の政治テーマは「大阪の行政機構」の問題をどうするか、都構想をどうするか、に関心が集中している。
 いっぽうで、少子高齢化は進み、教育レベルが下がり、雇用は改善せず、医療費・保険料は上がり続け、市民生活の不安は高まり続けている。橋下はあらゆる政治的テーマに「対立と分断」を持ち込んで「劇場政治」に仕立て上げるが、その帰結は橋下に拍手喝采を送るだけの賛成派と罵倒・中傷されて意欲を失う反対派を生み出すだけで、大阪府民の人心は荒廃しきっている。行政機構改革があらゆる問題の解決の突破口になるかのように語られるが、実際には「少子高齢化」「雇用」「医療」などより困難な問題に真正面から取り組むことが困難だから、「公務員イジメ」「組織イジリ」に夢中になっているだけではないか。いま大阪に必要なことは、一つ一つのテーマについて現状を把握して解決策を提示して、市民を巻き込んで実行していくことではないか。大阪都構想をめぐる議論には現状把握というのが完全に欠落している。政治家が「役所」という自分のテリトリーをいじり回すことに躍起になっているだけで、市民生活の把握という観点が完全に欠けているのではないか。市民の不満のはけ口を「公務員イジメ」に向けているだけではなんら生産的・建設的ではない。
 今後、このブログでは「いま、大阪はどうなっているのか」について複数の観点から考察してみたい。今日、突然そんなことを思いついたのは、本日(2013年9月16日)、台風18号による豪雨で大和川が氾濫の恐れ、大阪市民に避難指示がでているまさにそのときに、「目の前の災害よりも都構想の是非を占う堺市長選挙」を橋下が優先して、自宅でツイッターに明け暮れていたという情けない話があったからだ。「都構想が実現すれば、大阪の災害対策も進む」とでも開き直るつもりなんだろうか。この政治的課題の「優先順位の倒錯」は絶対におかしい、だからこそ市民は「もっとほかにやることあるでしょ」と的確に批判しないといけない。そのための材料を提起していかないといけない。