ナナメヨミBlog

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参院選総括2〜第三極の行く末

・前回の記事の続きです。

 維新の会の伸び悩みをどう見るか。マスメディアは「慰安婦発言」による人気低下と言っているが、本質的にはべつの問題がある。それは、維新の会は自民党と政策・方向性の違いの無い「自民別働隊」であるために、国会活動において存在感がほとんど示せないということだ。関西ローカルメディアの影響力の強い近畿地方はともかく、それ以外で維新の会を支持した層は「改革派」として、自民党とは違う政治を期待して支持したはずで、それが総選挙での比例1220万票だった。「アベノミクス」を持ち上げて、安倍自民党へのゴマスリに終始して、なんの存在感も示せなかった。有権者の期待と維新の会の正体にあるズレが維新支持下落の根本にある。
 それに追い打ちをかけたのが「慰安婦発言」である。海外からの厳しい反応が相次いだ。橋下の発言はすべて国内有権者への「ウケ狙い」で言っているに過ぎず、橋下には国際感覚というものがまるで無いことを露呈した。市長としてはともかく、国政は到底任せられないという気分が広がった。一部保守派は「言うべきことを言った」などと持ち上げているが、国内向けのツイッターでわめき散らして、マスコミ向けの「放談会」で好き放題いってウケ狙いばかりしている橋下は、「言うべきことを言った」とは到底言えない。ほんとうに「言うべき」ならアメリカなり韓国に行って言えばいい話で、彼のメッセージは国内の支持者しか向いていない。現に世界中から批判が寄せられると「あれはマスコミの大誤報だった」などとマスコミに責任転嫁する情けない姿をみると、橋下が「言うべきことを言う」「責任ある毅然とした態度をとる」政治家とは到底言えないだろう。橋下の言い逃れ・責任転嫁に対して、まともに反論しないマスコミにも問題があるが。

 そして、みんなの党。この政党は不思議な党である。「アジェンダ」とか「政策本位」と言ってはいるが、相容れないはずの民主党選挙協力したり、憲法に対するスタンスも改憲派だったのが慎重派になったりと立ち位置が微妙に変化している。まわりの政党の動きに対応して立ち位置を変えて生き延びる「バルカン政党」とでも言うべきか。根本にあるのは新自由主義規制緩和推進の「小泉構造改革」を継承するという点なのだが、それ以外では「右派」とは言い切れない幅広い層から支持を受けている。しかし「弱い支持者」しかいない政党なので、東京選挙区のように比例71万票に対して選挙区32万票、政党の支持が候補者に結びつかない、候補者の質によって支持が左右される割合が大きい政党だ。「無党派党」とでも言っていいのかもしれない。かつては自民・民主に飽き足りない層を呼び寄せる政党だったが、いまは民主党御用組合松下政経塾などの保守系の色が強くなっているので、民主党支持を止めたリベラル左派の層の取り込みに躍起になっているように見受けられる。

 生活の党。この党ほど昨年総選挙から支持を落とした政党は無い。前回は「日本未来の党」だったが。民主党にかわる左派リベラルの受け皿、2009年政権交代民主党に期待した層の受け皿になることは可能だったと思うが、党運営の主導権争いで嘉田由紀子を追い出し、小沢一派の私党になってしまった。小沢グループというのは所詮、理念も理想もなくその時々の政局に応じて「対立軸」を作り出しては支持を集めようとする、政局ありきの政治家に過ぎないというのが有権者に明らかになった。これで、小沢一郎シンパは一気に離れて、小沢一郎自体の政治生命が終わってしまったように思う。だからいくら「脱原発」「消費税増税反対」を主張したところで、彼らに一票を託す気に有権者はなれなかった。選挙後二週間程度で政党自体を潰してしまう、これほどの有権者に対する裏切りはほかには知らない。

 昨年総選挙で第三極と言われたのは「非自公・非社共」の政党である。その政党として維新・みんな・生活を取り上げた。みどりの風も第三極と言えるが、総選挙でも参院選でも議席ゼロで影響力はないので詳しくは取り上げなかった。

 これらの政党は民主党が保守化・自民党化するなかで新たな対決軸を打ち出す政党として期待されたが、維新の会は対決どころか自民にすり寄る「自民別働隊」に過ぎないし、みんなの党原発問題などいくつかの政策では対決軸を打ち出しているが、雇用・社会保障など国民生活に関わる争点では企業寄りの自民党と変わらない立場(むしろ国民と対決する立場)だ。生活の党は「対決軸」を提示しているものの、小沢一郎の行状も含めて、政党そのものの信頼性が疑われている。これらの第三極は偽の対決軸、メディア主導の「ふわっとした民意」にすがり、国民に基盤を持たない政党だということが国民に知れ渡ってきた。それが今回の第三極伸び悩みの根本にある。

 文章が長くなったので、このへんで。左派政党(共産・社民)・無所属候補者の健闘に関しては次回。