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参院選総括〜「二大政党」の終焉

 ネット選挙が解禁された今回の参院選
 投票日までの選挙期間中に選挙の争点・政治の方向性についてまとめあげたかったのだが、時間がなかった。なので、選挙結果の総括と今後の政治のゆくえについて、考察していきたい。

 まずは議席数から
 自民 65
 民主 17
 公明 11
 維新 8
 みんな8
 共産 8
 社民 1
 諸派 1
 無所属2

 参院選の総括については、私の大好きな内田樹の論考もあるが、あまり賛同できるものではなかった。「綱領的・組織的に統一性の高い政党」=自民・公明・共産が勝利した、というのだが、自民が(過去に比べてリベラル派や護憲派が駆逐されているとはいえ)「一枚岩の政党」とは言い難いし、逆に、維新は新自由主義・右派という点では「一枚岩」だと思うので、どうも納得できなかった。
 
 私なりに印象に残った点を書き連ねる。
 1、自民党は勝利したが、有権者は依然として半信半疑である。
 2、民主党は都市部での支持崩壊が止まらず無党派の選択肢から外れてしまった。労組出身の組織候補の比重が高まって、二大政党の一角というポジションからは完全に外れた。
 3、維新は「観念保守」の受け皿として、一定の集票力を保ち続けているが、関西メディアの影響力のおよぶ大阪>近畿>西日本>その他地方と、地域差が激しい。
 4、みんなは消去法的に選択されているが、党の支持と公認候補の支持の乖離が激しい。限りなく無党派に近い層が「なんとなくマシ」な選択肢として選んでいる。
 5、共産党は久々の大躍進。とくに関東周辺での票の伸びが大きいのは都議選効果か。関西では選挙区2議席得たものの、維新の力が強く、得票の伸びでは関東や他の地方に劣る。
 6、これまで参院選では比例で共産3のみ、社民2のみが続いていた。今回、社民党共産党とはっきりとした差がついてしまったことで、今後は左派系有権者の選択肢から外れてしまうのではないか。
 7、生活の党は「未来の党」解党騒ぎで「小沢一派の私党」となってしまい、有権者の支持を失ってしまった。
 8、糸数慶子山本太郎の当選は、「総自民党化」に対する地方・無党派からの異議申し立てである。

 有権者は「アベノミクス」を評価したが、郵政選挙の小泉のように国民が安倍に熱狂しているわけではない。ほんとうに自分たちに「おこぼれ」が回ってくるのか、半信半疑で見ている。業界団体・地域団体は自民党政権がしばらく続くという見立てて自民党支持をした。自民党・安倍政権は「参院選シフト」として「安全運転」に徹していたが、これは選挙が終わるまでは「世論を二分する問題」「有力な支持者・団体の不利益になる政策」の判断を先送りするということである。今回の自民勝利はもしかしたら、自民党の「終わりの始まり」かもしれない。8月にはTPP交渉の結果も明らかになるし、秋になれば消費税増税の決断もある。「成長戦略」も6月の第1弾では「ネットでの薬販売解禁」など大した政策は無かったが、秋の第2弾では「解雇自由化」「残業ゼロ」など企業本位・国民生活軽視の内容が出てくる可能性が高い。あまり話題にならない社会保障国民会議も、年金支給開始年齢の引き延ばしや、医療費負担の増額など、国民に痛みを強いる政策ばかりである。年末が近づけば、ボーナスに「アベノミクスの成果」が反映されるかが焦点になる。政権発足1年でアベノミクスの実態が国民に知られるようになり、「様子見」ムードの人も安倍政権への支持・不支持が分かれてくるだろう。

 民主党は都市部では完全に見放されつつある。5人区の東京で落とし(「共倒れ」があったにせよ)、4人区の大阪でも落とした。近畿地方ではゼロ、近畿以西でも2人区の広島・福岡で2議席目滑り込みがやっと。労働組合の組合員から見放され(選挙運動のサボタージュや他党への投票も多かったと聞く)、無党派の選択肢からも外れた。政権批判の受け皿は共産党に流れた。
 この原因は野田政権時代に進めた「自民党化」にある。消費税増税に賛成し、原発再稼働に賛成したことで、「自民党とは違う政治」を求める都市部のリベラル派が完全に見放した。いま自民党がすすめている政策は国民の支持の高い「アベノミクス」を除けば、国民に負担を強いる政策ばかりなのだがすべて民主党が撒いた種である。だから、民主党自民党を批判しきれない。方針転換しようにも「リベラル左派」を標榜して有権者を騙した過去があるので、いまさら「福祉重視」「消費税増税反対」「原発再稼働反対」など主張しても有権者ひんしゅくを買うだけである。それどころか、民主党無党派の支持を受けた都市部のリベラル派が次々と落選し、松下政経塾自民党出身で強力な地盤を持つ保守系や労組出身の議員の比重が高まっているので、「リベラル左派」の政策では保守系や労組の支持すら得られなくなり、保守系・労組出身者は難色を示す。だから、民主党はかつての「民社党」のように、自民補完勢力の一部として細々と存在するにとどまるのではないだろうか。新聞を読むと、あいかわらず「二大政党制」「野党結集」「保守vsリベラルの対立軸」を期待する論者が幅を利かせているが、「偽装左派」「違いの無い二大政党」に飽き飽きしているのがいまの有権者だ。維新やみんなと合同して巨大な野党をつくったところで、「野合」と見透かされるのがオチではないだろうか。

 その他の政党に関しての考察は次回に。