ナナメヨミBlog

旧ナナメヨミ日記。Blogに移行しました。

政治の混迷、日本の混迷

 久しぶり、今年はじめての更新である。

 昨年は総選挙で民主党が大勝し、鳩山政権が発足した。「子ども手当」「高校授業料無償化」「後期高齢者医療制度見直し」「郵政民営化見直し」など、福祉軽視・経済成長重視の自民党政治の修正を掲げたマニフェストへの支持、首相が頻繁に交代する自民党政治への不信感や倦怠感を背景があったのだろう。就任当初には今までにないほどの高い内閣支持率があった。しかし、今月の各社世論調査では30%を割り込む「危険水域」にまで内閣支持率は落ち込んでいる。

 この政治の混迷はどこから来るのか。
 目先の問題だけ見れば、普天間問題の迷走、歳出削減が進まず国債だのみのバラマキ政治、決断力のない鳩山首相の資質、などが挙げられる。だけれども、小泉以後、安倍・福田・麻生・鳩山と政党は違えどいずれも、内閣発足当初は高い支持率を誇りながら徐々に低下し1年程度で政権が崩壊している(鳩山政権ももって1年だろう)という点は共通している。目先の問題とは別の「日本の構造問題」が政治の低迷に影を落としていると言えるが、あまり問題にはされない。なぜ、日本の政治は混迷を続けるのか?それは、「自民党政治」とか「官僚支配」とか「民主党政権の未熟さ」とか「小沢独裁」とか、そういった明らかに問題のある“ガン細胞”によって引き起こされていると説明されることが多い。左派、右派いずれもそういった説明をする。確かに「分かりやすい」説明だけれど、それはどこか言葉足らずな印象を拭えない。もうちょっと長期的な視点で、日本政治を見直してみたい。

 日本政治の混迷は今に始まった話ではない。池田・佐藤の長期政権の後、1970年代には田中・三木・福田・大平と4つの政権が2年おきに交代している。1980年代は中曽根政権が長期政権となるが、竹下・宇野・海部・宮沢政権はいずれも短命に終わり、「非自民」の細川・羽田、その後は自民党が政権復帰するものの単独政権を確立できず、社会党新党さきがけ自由党公明党保守新党などパートナーを変えながら連立を組むことで政権を維持してきた。小泉政権のような長期政権はむしろ特殊で、短命政権が「出来ては潰れ」こそが日本政治の常態なのだ。

 1970年代の政治混迷は、高度成長の終焉により「高度成長の歪み」が前景化してきたことに由来する。金権政治、公害、都市の過密、地方都市の衰退、アメリカとの関係、貿易不均衡の是正etc、高度成長の過程で生み出された問題、高度成長の結果として日本が「経済大国」になったゆえの問題、様々な問題が噴出した。そこに主義主張の微妙に異なる派閥抗争が重なり、政権は次々と交代した。そこで自民党政権は、政治資金規正法の改正、地方重視の公共事業、輸出自主規制による貿易摩擦の沈静化、年金・健康保険制度の整備など打てる手を打ちながら、難局を乗り切った。なんとか政治への信頼をつなぎとめ、安定的な経済成長と国民生活・福祉の向上を両立させ、外交でも摩擦を避けることに注力した。
 1980年代は中曽根政権が対米関係の改善・財政再建をすすめ、長期政権となった。その後は政治献金問題、個人的なピンクスキャンダルなどで短命政権が続き、非自民の細川政権が誕生した。
 この1980年代末から1990年代前半の政治混迷は、今日の日本と瓜二つである。この両者に共通するものは何か。それは「冷戦終結」である。1990年代前半の政治的課題はウヤムヤにされたまま、日本経済は長期低迷に陥り、企業部門のリストラ、家計部門の所得減少といった形で国民はシワ寄せを受け、2010年代にまで持込されたのである。
 「冷戦終結」と「日本政治の混迷」、このテーマは長くなるので日を改めて。