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自民党圧勝を前にして野党のとるべき戦略とは何か? 2017年10月22日衆議院選挙の分析(その2)

 衆議院選挙の分析について、選挙期間中にもいろいろな記事を書こうかと考えていたが、選挙活動の支援に忙殺され考える時間もなく終了してしまった。選挙になるといつも、ああしよう、こうしようというアイデアだけは浮かぶのだが、目の前の仕事でいっぱいいっぱいになり消化不良のまま終わってしまう。そして疲れ果てて、しばらくは政治を考えることがいやになる。選挙ではいつも神経を消耗しきってしまう。

 さて、今回の衆議院選挙の確定議席数は以下のとおりである(10月23日の朝日新聞ウェブサイトより)。

自民 284 小選挙区218比例区066
公明 029 小選挙区008比例区021
維新 011 小選挙区003比例区008
希望 050 小選挙区018比例区032
立憲 055 小選挙区018比例区037
共産 012 小選挙区001比例区011
社民 002 小選挙区001比例区001
無与 001 小選挙区001
無野 021 小選挙区021

 結論から言うと、自民党の圧勝である。野党は4野党(民進・自由・社民・共産)による共闘戦略をすすめていたが、前原民進党の突然の解党、希望への合流、そして立憲民主党立ち上げにより破綻してしまった。その結果、候補者が乱立し小選挙区での自民党の圧勝を許す結果となった。とはいえ、比例で見れば希望・立憲合わせれば自民党を上回る。民進党のままで戦った場合、自民党を上回る比例票を獲得できたとも思えず、この点は分裂のプラス面が出たといえる。維新は希望に食われ、共産は立憲に食われともに埋没した。維新は大阪のみの政党に縮小し影響力を落とした。共産は議席を減らしたものの、今までにない形の小選挙区での選挙協力で一定の存在感を示した。民進党の無所属議員が多く誕生したのも今回の特徴である。

 今回は希望の党立憲民主党の立ち上げと野党政局のイベントが立て続けに起こった。とはいえ投票率は戦後最低の前回より1ポイント上昇にすぎず、結局は政治に関心のある層での票の移動に過ぎず、無党派層・無関心層のムーブメントが起こったわけではない。これは深刻な問題である。

 自民党が必ずしも積極的に支持されているわけではない。とはいえ、今の小選挙区制では野党が一つにまとまらない限り勝てない。しかし、一つにまとまると玉虫色の政党になってしまい民進党のように「何も決められない」状況に陥り、国民の支持を失う。今回の希望の党への合流撃はこのような野党の行き詰まりの打開策なのだろうが、あまりにも拙速で無節操で選挙目当てと批判されてもしょうがないものだった。小池氏の「排除」は「何も決められない民進党」を脱却する上では必要だったと思うが、言い方が悪かったのだろう。

 野党はなぜ失敗するのか?それは、私の考えでは「保守派を取り込もう」という戦略に走ることに原因があると思う。保守系を取り込んでこそ「現実的」であり「責任感」があり「政権獲得の実現性」が高まる、こういう発想が根底にある。保守派を取り込むために政策が曖昧になり、与党との差別化ができず、どうしようもない敵失がない限り野党が勝つことはなくなる。だから、思い切って共産党を含む野党共闘をすすめる方がいい。左に軸足をおきつつ、保守派を中道に、中道を左派にと「左になびかせる」戦略をとったほうがいい。もちろん、そこには大きな問題点がある。民主党政権が躓いたきっかけである沖縄基地問題、安保法制はどうするか、など安全保障をめぐる問題である。これを共産党の主張に合わせて実行しようとするととんでもない政治的エネルギーを消耗することになり「民主党政権の失敗」をまたも繰り返す可能性が高い。とはいえ、共産党自体、日米安保破棄を棚上げしたり、自衛隊を合憲ではないが活用する、というなどそれなりに妥協する姿勢を見せているのであり共闘することは十分可能だろう。反共思想をもちだしてとにかく共産党と組んではダメだという考えで前原は民進党解党に踏み切ったが大失敗だった。共産党と協力した立憲民主党のほうが比例得票が上回ったことを考えても、共産アレルギーとはごく一部の保守派・連合幹部が叫んでいるだけで、国民にとってはどうでもいい問題なのである。野党は左に軸足を置きながら、地道に政策を主張して、世論を左になびかせる努力をしたほうがいい。その努力抜きに右にウイングを伸ばしても今回の希望の党のように「変節漢」と叩かれるだけである。そして左に軸足を置くために必要な組織・金をどうするか?、そういう観点から野党は取り組みを始めるべきだと思う。