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オルタナティヴな生き方を考える…「その日暮らし」の人類学

「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)

「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)

 アフリカで「その日暮らし」に明け暮れる人々は一見、「いい加減」「怠けている」ようで彼らには彼らなりの道徳があり合理性がある。インフォーマル経済、海賊商品、仲間同士の貸し借り、試しにやってみる精神、なんでもやってみるジェネラリスト・生計の多様化…といったキーワードで特徴づけられる。

 「計画的」「勤勉」であることに縛られている日本人から見れば新鮮さがある。人間関係の希薄化、レールを外れることを恐れ流動性の低い社会、意欲を失う人々…いまの日本は豊かなのに暗く、閉塞感で溢れかえっている。アフリカと日本は対照的である。非常に興味深いエピソードが散りばめられており、一読の価値がある。

 個人個人の生き方、考え方として「その日暮らし」的な発想を取り入れたり、互酬的なコミュニティを構築することは面白い。けれども、この本を受けて「新自由主義こそセーフティネットだ」などと主張するのは違うだろう。「だめ連」が「だめなりに生きる」ことを実践しているからといって「貧困層はだめ連を見習って生きろ」というのは間違っているのと同じである。哲学、生き方の問題と現実の社会保障の制度設計は別の問題である。それだけは勘違いしてはいけない。