ナナメヨミBlog

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「老後のお金」を考える

 老後の生活をどうするか?多くの人にとって切実な問題だ。老後にゆとりある暮らしをするには夫婦で毎月36万円必要という調査もある(生命保険文化センター「生活保障に関わる調査」2010年度)。それだと、65歳から90歳までの25年間で1億円以上もかかってしまう。公的年金と退職金、現役時代の預貯金合わせて1億円というのは大手企業社員や公務員であっても厳しい数字だ。お金が足りない、それなら投資して増やすしかないという話になる。この調査は「生命保険」文化センター、生命保険の業界団体が発表したものだ。要するに生命保険会社や証券会社といった金融商品を売って利益を上げる人たちが「投資しないとゆとりある老後は送れないぞ」と煽っているのである。巷にあふれる「お金の話」の大半は金融商品の広告にすぎない。そんな中で「老後のお金」を考えるオススメの本が大江英樹・井戸美枝「定年男子 定年女子 45歳から始める『金持ち老後』入門!」(日経BP社、2017年)である。

定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!

定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!

 本のタイトルにある「金持ち老後」というワードを見たときは、「ああ、よくある投資ハウツーものか」くらいにしか思わなかったが、実際に読んでみると「投資する必要はない、むしろ下手に手を出すと損する」と投資を勧めていない。老後のお金の不安とはなにか?1、老後の生活費がいくらかかるか分からない。2、老後の収入(年金)がどれくらいもらえるか分からない。3、老後の蓄えがどれくらい安心なのか分からない。この3つの「分からない」があるから老後に不安を感じる人が多い。しかし、「3つとも結構分かっちゃう」のである。
 1、老後の生活費は定年の数年前から家計簿をつけることで把握できる。定年退職すれば仕事にかかわる支出は減るのでそんなにお金はかからない。みんながみんな「1か月36万円」必要なわけではない。2、老後の収入はねんきん定期便で把握できる。収入が足りない分は定年後に働けばよい。月8万、10万程度でも塵も積もれば山となる。月8万円で10年間働けば960万円。3、老後の蓄えはいくらいるか?それが分からないのは病気や介護などの「もしものお金」がいくらか分からないから。日本の健康保険制度では高額療養費制度があるし介護保険にも同様の制度がある。医療費の上限は知れている。医療+介護で一人800万円見ておけば大丈夫。高額な民間生命保険に入らなくてもよい。
 私は今年で35歳だからタイトルにある「45歳から始める」よりも10歳若い。しかし私は収入の少ないサラリーマンだから今のうちから老後について考えておかないといけない。経済的余裕のない人は将来を考える余裕がないから目先に振り回されて年金も払わず、ヤケクソの浪費をしてしまいがちだが、もらえる年金が少なく貯金も難しいからこそ、早くから老後のことを考えないといけない。一方である程度の収入のあるサラリーマンや公務員なら贅沢な生活をしないのなら退職金と年金だけで生活はカバーできそう。現役時代の所得はすべて使い切っても何とかなるだろう。しかし、老後の不安を煽る情報や「年金破綻」が叫ばれる昨今では、老後に備えて過度な節約をして消費しない人は多い。老後のお金について、「金融広告」や「財政破綻論」に振り回されずに、落ち着いて考えるのは大切だ。