井手英策「経済の時代の終焉」(岩波書店、2015年)
- 作者: 井手英策
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/01/30
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
序章 さまよう「公」と「私」
第一章 私たちはどのように新自由主義に飲み込まれたのか?
第二章 なぜ私たちの賃金は下落するのか?
第三章 グローバリゼーションはどのように世界経済を揺るがしたのか?
第四章 なぜ財政危機が問題なのか?
第五章 経済の時代の終焉ー再分配と互酬のあたらしい同盟
読後メモ
・1970年代〜90年代 対米圧力、財政赤字・増税への財界の抵抗、「小さな政府」路線
・「土建国家型利益分配」が経済成長鈍化により機能不全になり都市中間層が「行財政改革」を支持
・IT技術、株主至上主義、グローバル化による労働者の地位低下、労働組合の組織率低下、賃金低下
・グローバル化、金融経済による経済不安定化・欧州型福祉国家の動揺
・地方政府の財政危機をもたらしたのは経済成長低下ではなく地域の分断、納税への不信感による「租税抵抗」
・「再分配」と「互酬」により経済を制御する社会へ
感想
・財政問題を考える際、「◯◯が悪いから財政が悪化した」と犯人探しに躍起になり、その「犯人」に負担させることで財政を改善しようとするのが財政再建論者のロジックである。しかし、このロジックでは必ず国民を世代間対立、階層対立、民族対立などの形で分断し、国民の租税意欲を削ぐことにつながっている。だから、特定の層に負担を背負わせるのではなく、負担を分かち合うこそ財政債権になるという著者の主張は従来の「財政再建議論」の堂々巡りを突破する処方箋になるのではないか。著者は民主党の税と社会保障の一体改革、子ども手当といった一連の政策、方向性を評価しつつも、予算抑制のために「犯人探し」をする事業仕分けなどに旧来型の財政再建手法を見てとり、民主党政権の限界を指摘している。国民の連帯をどう取り戻すか、それこそが財政再建、日本経済復活の鍵になるのではないか。