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日本政治の展望〜「新保守層」を切り口に〜

 4年前にこのブログで「新保守層」という切り口で日本政治を分析しました。

新保守層の時代 - ナナメヨミ日記
新保守層と橋下・維新の会 - ナナメヨミ日記
新保守層の閉塞感と新自由主義改革の「利害の一致」をただせ - ナナメヨミ日記

 地域共同体や業界団体を基盤とする利益誘導政治=「旧保守」、都市部貧困層・労働者を基盤に福祉や格差是正を訴える「革新勢力」という二つの勢力による対決が続いたのが1950年代から70年代までの政治状況でした。当時は地方から都市への人口移動が急速に進み、都市部の労働者は共産党社会党を支持しました。それが革新勢力の躍進、「革新自治体」の誕生に結びつきました。当時はこのままいけば「保革逆転」は時間の問題だと言われていました。
 しかし、高度成長を達成した日本には新たな政治勢力が出てきます。それが「新保守層」です。都市部の住民であり、地域共同体や業界団体の利益誘導政治には否定的、大企業のホワイトカラーであるため企業と対決姿勢をとる革新勢力にも否定的なのが「新保守層」です。日米安保体制、自由主義経済を擁護する点で自民党政治と一致しますが、田中角栄に代表されるような利権政治家に否定的なため自民党にも拒否感があるのが「新保守層」です。社会保障環境保護にも関心が高い点で革新勢力と一致しますが、企業社会の一員である点で企業との対決姿勢はとらない点で革新勢力とは相いれません。この新保守層が1980年代以降どんどん増えていきました。共産党社会党を支持していた労働者層も年齢を重ねて企業で昇進することで新保守層に変化していった人も少なからずいたでしょう。新保守層は特定の支持政党を持たない無党派層です。1980年代は「旧保守」vs「革新」の枠組みで政治が動いていたので、ある時は中曽根政権を支持し自民党に大勝をもたらし、またある時は消費税反対の社会党を支持しマドンナ旋風を生み出しました。1980年代までは新保守層を代表する政党は存在せず、状況に応じて「旧保守」や「革新」に乗っかっていました。
 1990年代になると日本新党新生党新党さきがけなど新保守層のための政党が誕生しました。利益誘導政治・金権政治自民党政治への不信が相まって細川連立政権が誕生しました。その後は新進党民主党が新保守層の受け皿となり民主党政権誕生の原動力にもなりました。民主党政権が迷走してからはみんなの党、維新の会が新保守層の受け皿になりました。しかし、みんなの党は解党し、維新の会は合併・分裂を繰り返した挙げ句に「おおさか維新の会」という地域色の強い政党に変化しました。最近の選挙での低投票率は行き場を失った新保守層が棄権していることに原因があるのかもしれません。新保守層はどこへ向かうのか、そして新保守層自身はどうなるのか、それが今後の日本政治の展望を考えるキーポイントになると思います。その新保守層の分析を踏まえた上で今回の参議院選挙の展望を考えていきたいと思います。