ナナメヨミBlog

旧ナナメヨミ日記。Blogに移行しました。

熊本地震で考えたこと

 今年初めてのブログ更新です。昨年は5月の都構想住民投票、11月のダブル選挙と地元・大阪の選挙が相次いだので維新批判をテーマにした記事が中心でした。とくに松本創「誰が『橋下徹』をつくったか」の書評記事は著者本人のツイッターで言及されたこともあり、いままでにないアクセス数・ブックマークを記録しました。それで調子に乗って書評記事もいくつか載せていたのですが、年明けから仕事が忙しくなり、読書したりモノをゆっくり考える余裕を失ったのでブログの更新は止まっていました。自分自身に余裕が出てきたので、これからはボチボチと記事をアップできたらと考えています。

 今回のテーマは熊本地震です。私は生まれも育ちも現住所も大阪なので地震の直接の被害はなかったのですが、住宅倒壊による死者・インフラの被害は甚大、今でも多くの方が避難生活を強いられています。震度7地震は今回含めて4回目ですが、そのほかは阪神大震災新潟県中越地震東日本大震災と最近21年のあいだに起きています。震度7が制定された戦後まもなくから40年以上発生していなかった震度7地震が最近21年間で4度も発生したのです。しかも地震が比較的すくなく安全とされ、耐震基準も緩く、地震保険料のランクも低い熊本県で今回の地震が発生しました。
 私は阪神大震災のときは小学生だったので死者の多さに衝撃を受けただけに終わり、中越地震は報道量が少なかったせいかあまり記憶になく、東日本大震災津波被害・原発災害という「特殊な災害」に関心が向いていました。なんとなく大震災とは「特殊」であり「他人事」のような気分だったのですが、今回の熊本地震を受けてはじめて、日本で暮らす以上、大震災には確実に遭遇するものなんだという意識に変化しました。日常的な防災意識、備蓄、災害時の生活ノウハウ、さらには災害を前提とした生活設計、そういったことを考えるようになりました。そこでオススメなのが「東京防災」です。これは東京都が作成した防災に関わる本なのですが、災害時の対処方法、避難生活のノウハウなど一通り網羅してあってわかりやすいです。イラストをふんだんに使っていて、項目別に分かれているので読みやすいです。東京都に関わる部分以外は誰にでも役に立ちます。しかも電子書籍版は無料で手に入れられるので、私はKindleアプリにダウンロードして読んでいます。


東京防災

東京防災


 熊本地震で印象にのこった点としては、ドローンを活用した被災地の撮影、スマホ・インターネットによる支援の呼びかけなど東日本大震災の時には普及していなかったテクノロジーが活用されていることです。スマホが普及したおかげか、人的被害が甚大ではなかったせいか、安否確認は比較的スムーズに進んだような気がします。東日本大震災の時は1週間たっても被害の全容をつかむことすら困難でした。熊本地震では支援のあり方・エコノミークラス症候群・「不謹慎叩き」など報道の焦点が地震被害そのものから次の段階に移っているのは安否確認がほぼ済んでいるからだと思います。
 私が今後考えていきたいのは、日本では誰でも被災者になりうるという前提で生活のあり方を見直す必要性があるということです。キーワードは「ミニマリスト」「捨てる技術」。これらは地震被害から出てきた思想ではないですが、形あるものは壊れる・モノを保管・管理する手間を考えれば、モノを捨てるミニマリスト生活というのも選択肢になります。モノを多くもてばタンスや本棚などの家具も多くなり、地震で家具の下敷きになるリスクもあります。また、住宅ローンで一軒家を買っても地震で壊れてしまえば、多大な負債を背負うことになります。日本では持ち家志向が強いですが、災害の多さを考えれば、住宅を所有するリスクについても考えなければいけません。
 もう一つは震災直後の支援に関してです。スマホ・インターネットといった情報ツールは発達していますが、一方で物流網は進化しているとはいえ、インフラが被害を受ければ機能しません。それで情報だけ先走って、遅れて消費しきれない大量の物資が送られてくる、といったちぐはぐが問題になっています。食料や日用品だけでなく、避難者のストレス解消・エコノミークラス症候群などモノ以外の支援の重要性も浮き彫りになりました。その根本にあるのは「情報とは何か」という問題だと思います。パソコンやスマホタブレットといったデバイスやアプリ・ネットサービスこそがITだというイメージが強いですが、情報の元にあるのは人間一人ひとりのニーズであり、それをすくい上げるのもまた人間です。我慢・忍耐こそが美徳だという風潮があり、「被災者」は「我慢・忍耐するもの」という意識があると、「◯◯が欲しい」「◯◯で困っている」というニーズを抑え込むことになり、ストレスを抱えたり病気になったりなど別の問題を起こすことになります。災害時でも秩序を守って混乱が生じないというのは日本人の美徳だと思いますが、いきすぎると欲求を抑え込むことによる問題を生み出します。情報網の構築や情報デバイスも重要ですが、ニーズを発信する、現場でニーズをすくい上げる人を育てることこそが「本当の情報化」ではないかと思わされました。