ナナメヨミBlog

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維新はこれからどうなるのか

 大阪都構想住民投票から1ヶ月以上が過ぎました。維新の会はどうなるのか?について記事を書きたかったのですがなかなか考えがまとまりませんでした。住民投票敗北直後の維新は意気消沈、今にも雲散霧消しそうな雰囲気でしたが橋下氏は安倍首相・菅官房長官と会食して以後は安保法制について積極的に発言するなどまだまだ元気です。マスコミの世論調査でも維新の支持率は(もともと低めにでる傾向はありますが)それなりの数字をキープしています。

 しかし維新の会というのは不思議な政党で初鹿氏のような 安保法制反対を明言して共産党の志位氏と握手する議員もいます。私は大阪市民なので、維新=大阪維新=橋下・松井のイメージで見てしまいがちなので非大阪系グループというのが不思議な存在に見えてきます。

 親安倍政権・与党志向の大阪系と反安倍政権・野党志向の非大阪系の力関係は大阪都構想の否決で非大阪系有利になるかと思われましたが、安倍政権のバックアップもあってか力関係が拮抗している状況は変わっていません。安倍政権・自民党としては民主・維新による野党連携はなんとしても避けたい、かといって維新が完全に政権入りすると政権批判票が民主に集中するので維新を政権に取り込むのもメリットがない(すでに過半数を抑えている自民党からすれば維新の議席は必要ではないし 大臣ポストのいくつかを維新に明け渡すことになる)。自民一強を続けるためには野党分断が続いたほうがありがたい。「右の野党」維新と「左の野党」民主、そして共産党と三党に分散すれば、政権支持が落ちても自公政権は選挙で勝てる、という見立てではないかと思います。
 かつて森政権の時、当時の主な野党は自由・民主・社民・共産と4党あり、それぞれがそれなりの得票力があり票が分散したおかげで、森政権は低支持率であったにも関わらず総選挙で勝利を収めました。475議席中295議席小選挙区が占めるいまの選挙制度では野党分断さえできれば与党勝利は確実になります。副作用としては共産党がそれなりの勢力をキープできるということです。野党が民主党に一本化されて「二大政党制」になってからは「政権交代」を旗印にした民主党に政権批判票が集中して、 一方の共産党は得票を落とし1桁の議席しか獲得できなくなりました。かつては共産党が強くなることへの警戒感があったので野党分断よりも二大政党制を(共産党をのぞく)各政党や財界は志向していました。自民党が下野しても共産党に政権をとられるわけじゃないのだから別に構わないというくらいの寛容さはありました。 しかし、いまの安倍政権をみるに自民党の下野こそなんとしても避けたいというふうに感じます。マスコミを統制してとにかく政権批判を抑えようと躍起になっています。自民党の下野さえ避けられるなら共産党が多少議席を増やそうが構わないという感じなのだと思います。民主党としては維新を取り込んで「二大政党制」で党勢拡大した時代よもう一度、とのことなのでしょうが政権側が維新をうまく利用して野党分断状態を持続させたいと考えているうちは維新と民主の合流は難しいでしょう。橋下氏も民主党を痛烈に批判していますし、大阪維新支持者の民主党アレルギーも相当なものです。

維新の会の今後を占うのは次の⒋点です。

1・大阪ダブル選挙がどうなるか?
2・橋下氏が国政進出するのか?
→大阪ダブル選挙で維新系が勝てば、大阪での維新勢力はまだまだ維持できます。負けたとしても橋下氏の復帰をちらつかせれば「橋下時代よもう一度」と期待する有権者をつなぎとめることができます。橋下氏という看板を失っても「新自由主義的改革」「公務員・労働組合叩き」「生活保護批判」など大阪の権力者層に迎合し、鬱屈した庶民をスカッとさせる言動を橋下の後継者が繰り返せば維新支持が急激に落ちることはないかと思います。

3・共産党が大躍進するかどうか?
→維新が生きながらえているのは大阪の支持基盤の厚さと共に、野党分断を望む政権の意向があります。住民投票でも政権中枢は橋下氏を応援するメッセージを送り続けました。とはいえ共産党が大躍進すれば事情は変わります。野党分断の副作用としての共産党伸長を黙認している政権や財界の意向が変わり、「野党分断」より「二大政党制」という2000年代前半の政局が繰り返す可能性が高まります。共産党が比例1000万票越え、比例票野党第1党などとなれば、その動きは確実に出てきます。自民党の政権維持よりもとにかく共産党に政権を取らせるな、というのが財界の意向になれば維新を遊ばせておく余裕はなくなるからです。いまの共産党にそこまでの力があるとは思えませんが、安倍政権に対する不満のはけ口が見いだせない政治状況になれば、こういうシナリオも考えられます。この際は共産支持層をとりこむために民主を軸にした野党再編になるでしょう。

4・自民党が財界・国民の支持を失うほどに腐敗するか?
→いまの自民党政権が財界の意向を軽視したり、国民の支持が凋落するほどの腐敗・不祥事を繰り返せば自民党に対抗するための政党を待望する財界の声や世論が強くなるでしょう。それもまた「野党分断」よりも「野党再編」をという政局を生み出します。その時に維新が軸になるのか、民主が軸になるのかはわかりません。

 自民党が一定の支持率をキープしている現状が続く限りは維新は野党分断の駒として生きながらえるのではというのが私の見立てです。
 大阪都構想住民投票で維新は敗北しました。橋下氏は引退表明をしました。しかし、「過激な新自由主義的改革」「公務員・労働組合叩き」「生活保護バッシング」「大型開発による都市再開発・成長戦略」といった大阪維新・橋下氏の中心的な政治思想は大阪の庶民にそれなりに浸透しています。強力なリーダーにすべてを委ねたいとする権威主義的心理や、庶民の不満のはけ口をわかりやすく提示してくれる攻撃的な言説(橋下氏や辛坊治郎氏)に拍手喝采をおくる市民はたくさんいます。住民投票で反対派は勝利しましたが、維新とは違う改革プランを着実に実行して成果を上げない限り、維新が再び盛り返す可能性は高いでしょう。とりあえず目の前の大阪市解体・大阪都構想をストップさせた意味は大きいですが、反対派の真価が問われるのはこれからだと思います。